かいひん食堂

「食を通じて、地域に貢献したい。」

食彩工房代表取締役の斎藤さん


 アバッセたかたに入り、すぐ右にあるフードコート。「かいひん食堂」と書かれた看板と、美味しそうな海鮮丼のポスターが目に入ってくる。

「かいひん食堂」の看板と、海鮮丼のポスター

「かいひん食堂」とは

 道の駅にある、まつばら食堂の姉妹店として2020年8月に営業を開始した、かいひん食堂。お店のコンセプトは「海産物を主体にしたメニュー作り」、「高田産の食材を広く使う。」、そして、「味はそこそこ、出すのが早い!」である。海産物はもちろんのこと、お米も高田産のものを使用している。

 かいひん食堂のスペースは限られており、入ることのできるお客さんの人数は少ない。お店の回転を速くするため、料理をすぐに提供することに気を付けているという。また、セントラルキッチンの利用により、他の店とも連携し鮮度が落ちないよう料理を提供しているとのことだ。


かいひん食堂のメニュー

海鮮丼セット

 人気のメニューは、海鮮丼のセット。若い方が来るのではないかということで、若者向けにワンコインで食べられるみそ・しょうゆラーメンの他、広田湾産の若布粉を麺に練り込んだわかこちゃんラーメンなどもある。

 また、とても大きい自家製おにぎりも売られている。

塩うにおにぎりと、茎和布わさびおにぎり

 取材の際、ご厚意で塩うにおにぎりと、茎わかめわさびおにぎりを頂いた。

 しかしながら、私はこれまでうにを食べてきて、美味しいと感じたことがなかった。それでも、このうにならば自分を満足させてくれるのではないかという期待に突き動かされ、塩うにおにぎりを口にした。感想は、美味しい。私の他にも苦手な人がいたが、一口食べると、「美味しい」と言った。とにかく癖がなく、食べやすいのだ。このおにぎりは、私のうにに対する常識を覆す一品だった。塩うにおにぎりはとてもオススメする。


震災時でも、人を思う心を忘れず

 震災時は、宴会の準備をしていたという斎藤さん。地震が来ると、すぐに皆を外に出し、避難させた。避難所が決まっていたため、落ち着いて、スムーズに逃げることが可能だった。

 震災後、陸前高田市・県からの要請で、8月中頃まで避難した方々へのお弁当作りを行い、9月中頃から、仮設で営業を再開した。震災後一年間は寝る暇もないくらい忙しかったにも関わらず、赤字営業となっていた。それでも、住民のためを思い、働き続けたという。

 道の駅にある姉妹店のまつばら食堂のような店が町なかにもあったらいいな、という声かけをいただいたことが、オープンのきっかけとなった。その後、食彩工房からの食材、ノウハウ、人材派遣などの全面的なバックアップがあり、開業に至った。


今後の陸前高田への思い

 食を通じて、地域の人たちに貢献していきたいと斎藤さんは語る。岩手全体でもそうだが、陸前高田は特に人口減少が進んでいる。そのため、安全・安心な、医療や働く場所があることを大事にし、多くの人に住みたい、行きたい、と思ってもらえる町になっていってほしい。今も昔も、地域と住民を大切にしていることが伝わってくる。そして、インタビューの最後には、「誰でも気軽に立ち寄ってください!」と、優しくおっしゃっていただいた。

かいひん食堂の皆さん


インタビュー先

店名:かいひん食堂

定休日:木曜日、元日

営業時間:10:00~16:00

電話番号: 0192-53-2111

担当者の氏名:斎藤 政英 様

インタビュー実施日:2020年9月23日(水)


インタビュアーの自己紹介

 岩手県立大学 1年 江田玲栞

 岩手歴7年目にして、初めて陸前高田を訪れました。被災された場所という印象が強かったのですが、それだけではないということを陸前高田の人々の暮らしぶりから教えていただきました。多くの人が、地域に強い思いを抱いており、そんな陸前高田をこれからも応援していきたいと強く思いました。

ここまでお読みいただきありがとうございます。陸前高田市へ訪れた際には、ぜひに、かいひん食堂様までご飯を食べに行ってみてください。特に、塩うにおにぎりを!

やぎさわカフェ

やぎさわカフェ

カフェ


「気負わないで来てほしい」


インタビュー先:やぎさわカフェ
 電話番号:0192-47-3500
 営業時間:10:00〜19:00(ラストオーダー18:30)
 定休日 :毎週月曜日(祝日の場合はその直後の平日)


■ほっと息をついてもらえる空間を。


 ダークブラウンを基調とした店内は、アバッセ内でも落ち着いた空間のひとつ。今日も人々がここで思い思いの時間を過ごしている。ここ“やぎさわカフェ”は隣接する市立図書館とひとつづきになっており、蓋つきのドリンクはそのまま図書館への持ち込みが可能だ。図書館の一部、カフェの一部としてお互いに空間を共有しあっている。
 “やぎさわカフェ”アバッセたかた店では、老舗醸造蔵八木澤商店ならではの醤油を使った「しょうゆキャラメルソース」のメニューがイチオシ。この「しょうゆキャラメルソース」は、醤油によってキャラメルの甘さがくどくなく、一度食べたら病みつきになってしまう。このソースは、「しょうゆキャラメルマキアート」と「しょうゆキャラメルバナナワッフル」の2つのメニューで味わうことができる。アバッセたかた店では、“やぎさわカフェ”初の試みとなるワッフルにもこだわっている。ワッフルには米粉が使用されており、外はパリパリ、中はもちもちふわふわで、見た目のボリュームの割にはぺろっと平らげられてしまう。ドリンクメニューもワッフルメニューも種類が豊富に揃っているが、迷ったらぜひこの2つをセレクトしてみてほしい。


「しょうゆキャラメルマキアート」と「しょうゆキャラメルバナナワッフル」

■これまでの歩み
 八木澤商店は200年以上の歴史を誇る、老舗の醸造蔵。
震災当時の様子を伺った。当時は、本店の近くの集会場にて幹部会議をしていた最中に地震が起きた。会社では年に2回の避難訓練が行われていたため、いつも通りの避難経路で避難をし、全員が無事であったという。しかし、工場などは全て流されてしまい、代々引き継がれてきた醤油をつくるためのもろみを失ってしまった。諦めかけていたその矢先、釜石の試験場で保管されていた八木澤商店の醤油のもろみが見つかったことで、途切れることなく八木澤商店の醤油作りを復活させることが出来たという。
奇跡の一本松にあった”やぎさわcafe”
そして、震災後10ヶ月で商品の販売を再開させた。その後大原(一関市大東町)に工場、陸前高田市矢作に本社兼店舗を構えたが、元あった土地にも店舗を残したいということから、“やぎさわカフェ”一本松店ができたという。その一本松店で、ヒットしたメニューがしょうゆソフトクリーム。一本松店ではゆっくりしてもらいたいが、スペースの確保が難しかった。そのため、ここアバッセたかた店では、ゆっくりと座って長居できるような空間作りにこだわっている。



■店から変わっていく街の景色が見える


 アバッセの入居については、アバッセの理事長から声がかかったという。
 もともと工場で働いていたこともあり、アバッセたかた店の作業は慣れないことが多く最初は戸惑うことも多かったという。また、こちらのお店は外に面してガラス窓になっており、店に立っていると、外の景色が見渡せる。震災後は、暗くなると街灯もなく真っ暗な景色が広がり、海は見えない、埃とダンプだらけになってしまった街。自分の街であったのに、遠い知らない街のように感じてしまっていたという。しかし、最近になってくると、灯りが灯ったり、他のお店ができたりすることで、前よりも前向きな気持ちになれるという。また、公園ができ、子供達の笑い声も聞こえるようになったことで、若い元気なエネルギーがとても救いとなっているそうだ。

■私たちは元気だから。そんなに気負わないで。気軽に遊びに来てほしい。


 「陸前高田市」と聞くと、どうしても「街がなくなった、甚大な被害を受けた」ということが後について回ってしまうこの地であるが、ひとつの街として楽しんでほしい。それが私たちスタッフの願い。「陸前高田に遊びに来て、遊び疲れたらここでゆっくりしていってね」と笑顔で語ってくれた。
 あなたはここでどんな時間を過ごすだろうか。


リハビリ特化型デイサービス&フィットネススタジオReBorn


ReBorn

リハビリ特化型デイサービス&フィットネススタジオ

「生まれ変わる」

インタビュー先:ロッツ株式会社統括マネージャー 草別拓郎さん


電話番号:0192-22-7917

営業時間:介護事業 8:30~17:30 土日定休
     フィットネス事業 平日17:00~21:00
              土日  9:00~21:00

■デイサービスとフィットネスの融合!?
 ランニングマシーンのほか、大きな器具が目を惹く「リハビリ特化型デイサービス&フィットネススタジオReBorn」。これまでの生活から新たなる生活に生まれ変わるために、利用者の「できる力」を引き出すことを目的としている。
 この地域のデイサービス施設には珍しく、リハビリに特化したサービスを行っている。短時間のデイサービスで、食事提供や入浴などは行っておらず、まさに運動をすることに特化している。また、デイサービスの時間外にはフィットネスクラブとしても営業されており、日々、中学生から80代まで様々な年代の方が利用されている場所。ゆったりと落ち着いた雰囲気の中、優しい従業員さんが出迎えてくれ、老若男女問わず、通いやすい場所だ。

■リハビリ特化型デイサービス
 理学療法士と作業療法士を配置し、利用者に合ったサービスを提供するのがリボーンの特徴だ。3か月に一度の身体測定や、身体機能の評価、プログラムの作成・施行などを行っているそうだ。測定データはフィードバックされ、利用者が自分の目で確認することができる。このことが、モチベーションの向上につながることは、間違いないだろう。専門の方たちのアドバイスを受けながら、日々の運動不足を解消できる。加えて、様々な地区から来ている利用者とのコミュニケーションの場にもなっているのも魅力だ。


■ICAROS(イカロス)!!
 必見!!皆さん、テレビで一度は目にしたことがあるのではないだろうか。ここReBornには、東北初上陸のVR(バーチャルリアリティ)+エクササイズを融合させたフィットネスマシン「ICAROSイカロス」が2017年10月から導入されている。ドイツ生まれのこのマシンは、ゲームなどでおなじみのVRを取り入れ、ゲームの世界観を楽しみながら体幹を鍛えることができる、今大注目のマシンだ!!東北では、ここでしか体験できないため、これが目的の方も多いとのこと。実際にマシンに乗ってみただけでも、バランスをとるのが難しく、非常に体幹が鍛えられそう!
 
 
■震災を通して
 ロッツ株式会社は、震災をきっかけに、「せっかく助かった命を健康にしていかなければ」という使命感と地域ニーズを考慮し、「とうごう薬局」を20117月、陸前高田市に仮設プレハブでオープン。その後、20125月に復興特区第一号として日本で初めて単独型訪問リハビリステーション「訪問リハビリステーションさんぽ」を開設した。20166月からは「玉乃湯」という温泉施設の運営も担うことになった。地域の皆様のコミュニティー形成や温浴療法、そして食事療法など幅広い事業に取り組んでいる。ロッツとは「たくさん」という意味があり、「沢山の方々に被災地に来てもらって復興に寄与してもらえたら」という願いを込めて名付けられたそうだ。
ロッツ株式会社が運営していた仮設の訪問型リハビリテーション「さんぽ」

■「できる力」を引き出すことで、生まれ変わってほしい!!!
 「利用者のやりたいことを引き出し、生まれ変わってほしい(ReBorn)」と、熱く語るのは、ReBorn統括マネージャーの草別拓郎さん。ロッツの理念に惹かれ、思い切って秋田県から転職。非常に気さくな方で、話していると明るい気持ちになれる。「運動をすることで認知機能もアップする。アバッセという陸前高田の中心地で、運動に触れ、その足で買い物をしたり、図書館に行ったりしてほしい。」という想いを語る。リボーンは、ゆっくりできるようなおしゃれな内装や、デイサービスにもフィットネスにも使うことのできる機械など、こだわりがたくさん詰まった空間。利用者に合わせたリハビリを、専門の方が見守りながら行ってくれるため、日頃の運動不足解消や、できることを増やしていくために通うには最適だ。また、一般の方もフィットネスとして、ICAROSのお試しに、皆さんに気軽に足を運んでほしい。そんな私の想いを最後にお届けしたい。
 後日、アバッセのパブリック・スペースでイカロス無料体験を実施していたので試してみた。海の中に潜って輪くぐり遊びをしているよう。楽しく鍛えられそうだ!

脊椎の補正をしてくれる機械。こっちは気持ちよく寝ているだけでイイ。


さいとう製菓

三陸菓匠さいとう

三陸菓匠

「日常の象徴」を

インタビュー先:さいとう製菓 中舘由里子さん

  電話番号:0192-55-2186
  営業時間:9:00~19:00
  定休日 :なし(全館休館日のみ休み)
  ウェブ :https://www.saitoseika.co.jp/


アバッセたかた内の店舗
■岩手のお土産「かもめの玉子」 
 ホワイトチョコに包まれた、三陸銘菓「かもめの玉子」でおなじみのさいとう製菓。お饅頭やどら焼きなどの和菓子はもちろん、ショートケーキやバターカステラなどの洋菓子まで、四季折々のお菓子が揃っている。季節折々の旬の果物を使ったケーキを販売しており、年に4回新作のスイーツが発売される。ほかにも、毎月の月菓子が限定販売される。
 さいとう製菓さんでは「岩手を食べよう」をモットーに、地元の素材を生かしたお菓子作りをしている。「キタカミ小麦」や「南部どりたまご」、県産のフルーツを使っているそうだ。こだわりの素材の持ち味を生かしたお菓子は「めんこいりんご」、「恋し浜」等々、岩手ならではの名前をつけられて、私たちの日常に寄り添っている。
 そして定番の「かもめの玉子」は、シリーズ展開している。「りんごかもめの玉子」や「かもめのショコらん」、材料を吟味し金粉をあしらった「黄金かもめの玉子」など、たくさんのバリエーションがある。そのすべてが揃うのは、陸前高田ではアバッセ店のみとのこと。

  
「めんこいりんご」
SL銀河C58 239

■着の身着のまま
 2011年3月11日、地震直後は、お客さんも従業員さんも共に高台を目指し、着の身着のまま避難したという。ショッピングセンターリプルにあった店舗を含め、沿岸の店舗は津波によりすべて流出。従業員さん同士の安否確認もなかなかできず、全壊したお店を前に立ち尽くしてしまった。

■お菓子と日常

陸前高田市竹駒の仮設で営業していた「さいとう製菓」

 被災後いち早く立ち上がったさいとう製菓。その影には、「さいとう製菓が復興を引っ張って、みんなについてきてもらわなければ」という思いがあった。車も使えず移動もままならない中、内陸から自転車を取り寄せて出勤したり、工場が半稼働となり、少ない種類のお菓子を上手に組み合わせて用意したりして、仮設店舗として復活を遂げた。高田店仮設店舗がオープンしたのは2011年8月4日だった。

仮設店舗の店内
お菓子と日常は切り離せない。お菓子は
人を笑顔にし、いつも楽しい気持ちと共にあるお菓子は、日常の象徴と言えるのだろう。仮設店舗の開店と同時に、たくさんのお客さんがお菓子を買いにやって来た。お菓子屋さんでお菓子を買って、美味しいねと笑いあう。そういう「日常」が戻ってきた瞬間だったのではないだろうか。さいとう製菓の復活が、地域の人々にどれほど明るく見えたことか。
 インタビューに答えてくださった従業員の中舘由里子さんは震災当時、これからどうなるのかと不安は抱えつつも、お仕事を辞めることは考えられなかったそうだ。お菓子を待っていてくれたお客さんの声を聞いて、「ここでよかった」と感じた、と笑顔で話してくださった。

いろとりどりの洋菓子

■アバッセに出店して
 2017年4月27日から、アバッセたかたに店舗を移したさいとう製菓。子ども達の元気な笑い声がたくさん聞こえるようになった。場所が変わっても、「集まれる場所」としての役割は変わらない。お店で知人友人と鉢合わせてお喋りをしていたりするお客さんの姿を見られるのが嬉しいという。「買い物だけでなく、人が集まり文化と歴史を継承していく、にぎやかな場所になることを願っている」と中舘さんは話してくださった。

■会話の糸口、ふるさとの味 
 岩手県民なら多くの人が、食べたことがある、お土産に持って行ったり、もらったりしたことがある、かもめの玉子。「ふるさとの味」として人々の記憶に残るさいとう製菓のお菓子が、会話の糸口にもなる。甘く広がる旅の味はもちろん、お客さんとさいとう製菓との変わらぬ絆こそ、さいとう製菓の愛される所以なのかもしれない。

インタビューに答えてくださった
従業員の中舘由里子さん

あべや


あべや

たこ焼き・たい焼き

「憩いの場所の役割を」

  インタビュー先:株式会社共立土木 畠山正彦さん


    電話番号:0192-55-2325
    営業時間:9:00~19:00
    定休日 :無休(全館休館日のみ休み)





アバッセ入口のすぐ近く

■たこ焼き・たい焼きのファーストフード
 あべやさんは、アバッセたかたの専門店街に入ってすぐのところで営業している。手頃な値段でバリエーションが豊富なたこ焼き、季節感のあるたい焼きのメニューの他、ドリンクやホットスナックを販売している。特にお好み焼きをたい焼きで挟んだ「お好みたい焼き」は、ソースの風味にお好み焼きの味とたい焼きの食感が見事にマッチしていた。また、季節限定商品としてはシチュー味のたい焼きなどがあったが、筆者は紅茶クリーム味のたい焼きを購入した。値段も100円と手頃であった。紅茶の豊かな香りをふんだんに感じ、そのおいしさとお得感のあまり、2つ目に手をだしてしまった。

ボリューミーなたこ焼き
 一押しの「お好みたい焼き

■アバッセに出店して
 アバッセの開店と同時にあべやさんはスタートしたが、当初苦労は多かったという。初めて食品を扱うため、仕入れのイロハからスタートしなければならなかった。そのため、多くの人からの支援が必要だったそうだ。「一つ一つ問題をクリアしながら、辿り着いた」という言葉からも苦労や困難が感じられた。一方、課題は残りつつも、現在は精一杯やっているため、そこまでの苦労はないとも語っていた。上記の通り、定番メニューから創意工夫を凝らした独自メニューなど、どれも食欲をそそらせるものばかりであった。加えて販売スタッフの方々の表情も良く、あべやさんからは確かに魅力を感じることができた。

豊富なメニュー
一休みにいかが?

■ひとりひとりの役割を
 取材時にも多くのお客さんが利用していた。利用客のなかには公営住宅に住む年配の方も多く、嬉しそうにしていってくれると教えていただいた。また家族連れの姿も目立ち、子どもがたい焼きをほおばる姿が印象的であった。取材中も、畠山さんは家族連れの姿に笑みをこぼすとともに、やってよかったと語っていた。
 盛岡と同じようにするのは難しい。けれでも町全体としての役割をそれぞれが持ち寄ることが必要だと教えていただいた。陸前高田は憩いの場所がたくさんあるわけではない。そのために、あべやさんは憩いの場所として、人が集まれる場所になることを求めていきたいと話されていた。ご年配から学生まで、広く多くの人の間でたまり場のようになってくれたら、とも話していただいた。
 陸前高田は現在人口減少をたどっている。その歯止めの一助となれればよい、と畠山さんは語っていた。そのために、ひとりひとり自分達のできる役割をやっていく。その言葉が強く印象的であった。

■なにかしらアクションを
 あべやさんの前身は「夢や」であった。夢やはもともと大型ショッピングセンター「リプル」で駄菓子を販売していた。避難訓練を実施していたため、震災時は迅速に避難することができたが、店舗はリプルともども流されてしまった。再建をするかどうか議論が続いたが、課題は多く、何を販売するかについても議論があった。
    そこで新しくアバッセが出来ることに合わせ、組合員の間で討論を重ねて新規にたこ焼き・たい焼きを販売することを決めた。出店するにあたり、地域のためを考えたとのことであった。本社の株式会社共立土木さんも被害を受けていたが、地域の力を保つために組合を脱退せずに、再スタートを決めたということであった。

■実際に来て、見てほしい
 このブログの閲覧者に伝えたいこととして、このように語っていた。風化の影響か、震災のことが忘れられてしまっている。そこで畠山さんはボランティアだけでなく、多くの人に来てもらいたいと考えている。何らかのきっかけで陸前高田を訪れ好きになってもらう。そして季節を感じながら来てもらえれば、と語っていた。
   筆者が陸前高田を訪れるのは今回が二度目であり、来るたびに新たなお店や魅力を発見した。あべやさんも新たな発見の一つであり、今度のたい焼きはどんな味だろうかと自然に思い起こされた。畠山さんの言葉はまさにこのことを表している、そう、驚きと陸前高田への好意を強く感じるものであった。