そらうみ法律事務所


弁護士過疎地域で働きたい!
 

法律事務所

そらうみ法律事務所陸前高田事務所



インタビュー先:そらうみ法律事務所 瀧上明(たきうえ あきら)弁護士

電話番号:0192-47-3613  FAX:0192-47-3617
営業時間:9:00~17:30
定休日 :土日祝日


■「困ったことがあったら、『そらうみ』に相談に行こう」
と、思ってもらえる地域の最も身近な存在でありたいと考えている法律事務所。

 雲の向こう側には青空が広がっています。荒れた海はいつか穏やかな青い海に変わります。空と海、いつもどこかでつながっています。私たちはあなたにとってそんな事務所でありたいと思っています。(そらうみ法律事務所ホームページより)

■弁護士過疎地域の解消をめざして関西から岩手へ
 瀧上さんは、大阪出身で大学も京都大学と大阪大学。2005年に神戸で弁護士を始めたにも関わらず、翌2006年、縁もゆかりもない岩手に移り住んで来た。弁護士過疎地で働きたいと志願し、日弁連の支援を得て、釜石ひまわり基金法律事務所(公設事務所)を開設して初代所長になったのだそうだ。

■震災後は「震災復興をめざす」法律事務所を釜石に
 2011年2月に一旦岩手を出たが、直後にあの震災。岩手に戻りたいと居ても立ってもいられず、勤め始めたばかりの東京の法律事務所をわずか3ヶ月で辞して、再び釜石へ。月命日の2011年7月11日を選んで、釜石に自力で「震災復興をめざす岩手はまゆり法律事務所」を開設した。相談自体は多かったけれどお金をもらえる仕事は少なかったので、経営はとても大変で、3千万円の赤字を出して撤退せざるをえなかったと言う。

■そして陸前高田事務所開設
 その後、瀧上さんら弁護士過疎地で活動してきた弁護士たち4人が、日弁連の支援に頼らず自分たちの力で司法過疎の解消をめざそう、と「弁護士法人 空と海」を立ち上げ。こうして、東京事務所、奄美事務所、そして瀧上さんが所長を務める陸前高田事務所が誕生した。

プレハブ事務所の相談室

2016年に開設した当初は、陸前高田市鳴石に建てられた仮設プレハブ事務所の一室。陸前高田商工会や陸前高田市社会福祉協議会、ハローワークなどと一緒だった。その仮設も取り壊しの時期が迫ってきた時、高田の中心市街地に商業施設をつくる、という話が進みつつあった。そこは高田のまちの中心になることがわかっていたので、「自分もそこに行かなければ」、「地域と一緒に生きていこう」、とアバッセへの入居を決めた。

商業施設アバッセに開設したそらうみ法律事務所

■商業施設アバッセに開設したそらうみ法律事務所
商業施設を設置・運営する「高田松原商業開発協同組合」の組合員の一員となり、要望も取り入れてもらったので快適な事務所だという。ただ、商業施設の中であまり目立つと相談に入りづらいかもしれないと、入口は施設の北側に設ける工夫をしたそうだ。

■法的支援を通じて復興に役立ちたい!

震災後釜石に戻ってきたときに開設した事務所を「震災復興をめざす岩手はまゆり法律事務所」と名付けたことからわかるとおり、震災に関係した法的支援に取り組んできた。
震災直後は、法律相談というより将来への不安などが多く、様々な「がせネタ」が流れる中で正確な情報を伝えることが弁護士の大切な仕事だった。もう少し時間がたつと債務相談が増えてきた。というのも震災直後は返済が猶予されていたが、半年たつといよいよ督促が行われるようになったからだ。それに伴って相続放棄も問題になってきた。法律では、相続放棄は3ヶ月以内にしなければならないことになっているが、そんな状況にはなかったからだ。震災に伴う特例措置の必要性が高まったと言う。
また、離婚問題も増えたそうだ。震災や狭い仮設暮らしの中で、夫との関係を見つめ直した女性からの相談が多いらしい。

■二重債務問題は、制度の周知が重要
個人債務については「私的整理ガイドライン」ができたが、これが多くの人に知られていない。銀行は、積極的に知らせようとはせず、単に返済期間を延ばして月々の返済額を減らす対応をしてきたからだ。弁護士たちが実態を把握して東北財務局に申し入れた結果、ようやく銀行も動き出した。
事業者については、グループ補助金の効き目が一番大きかったが、二重三重の債務が残っている事業者さんもいるので、これからが問題だと語る。

■法律は平常時のもの、緊急時には当てはまらないことが多い
法律は、基本的には平常時のものだから、緊急時にそのまま当てはめるとひどいことになる場合がある。例えば本人確認。免許証もないので本人確認のすべがない。どうする、とか。公共用地を確保する必要があるが、相続登記が行われていないため、相続人がたくさんいて、みんなから承諾を得るのは気の遠くなる作業になる、とか。これら直面する一つ一つの課題に、弁護士は立ち向かっていかなければならない。
それに、災害救助法は改正すべきだという。とりわけ、原則としてお金を給付できない現物給付主義は変えるべきだと言う。


■敷居の低い弁護士事務所でありたい
 法律は、本当は人を守るためにあるので、弁護士を身近に感じて欲しいと強調する。まだまだ、法律を利用できていない人が多いと思うので、できる限り事務所の敷居を低くしたいのだと。

 被災地では、法律相談を無料にする制度がとられてきたが、期限が2017年度までとなっている。でも、住宅の再建はまだこれからで、今後法律を必要とする人が増えてくる。無料相談の継続をと強く主張され取材を終えた。






インタビュアー:井上博夫(岩手大学名誉教授) 66歳
インタビュー実施日:2017/11/5
 2016年3月に岩手大学を定年退職し、2017年4月から陸前高田の仮設住宅で暮らしています。岩手大学と立教大学で陸前高田グローバルキャンパスを設置したのが契機だ。工事の土ぼこりだらけだった陸前高田に、ようやく街が姿を見せ始めた。まだまだこれからだが、まちの再生を願って、この企画をはじめました。
 瀧上さんは、復興への支援をしたい、そのためにも法律の敷居を低くしたいと強く願って、陸前高田にやってきた人だと思う。心強い。