三陸菓匠さいとう
三陸菓匠
「日常の象徴」を
インタビュー先:さいとう製菓 中舘由里子さん
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アバッセたかた内の店舗 |
■岩手のお土産「かもめの玉子」
ホワイトチョコに包まれた、三陸銘菓「かもめの玉子」でおなじみのさいとう製菓。お饅頭やどら焼きなどの和菓子はもちろん、ショートケーキやバターカステラなどの洋菓子まで、四季折々のお菓子が揃っている。季節折々の旬の果物を使ったケーキを販売しており、年に4回新作のスイーツが発売される。ほかにも、毎月の月菓子が限定販売される。
ホワイトチョコに包まれた、三陸銘菓「かもめの玉子」でおなじみのさいとう製菓。お饅頭やどら焼きなどの和菓子はもちろん、ショートケーキやバターカステラなどの洋菓子まで、四季折々のお菓子が揃っている。季節折々の旬の果物を使ったケーキを販売しており、年に4回新作のスイーツが発売される。ほかにも、毎月の月菓子が限定販売される。
さいとう製菓さんでは「岩手を食べよう」をモットーに、地元の素材を生かしたお菓子作りをしている。「キタカミ小麦」や「南部どりたまご」、県産のフルーツを使っているそうだ。こだわりの素材の持ち味を生かしたお菓子は「めんこいりんご」、「恋し浜」等々、岩手ならではの名前をつけられて、私たちの日常に寄り添っている。
そして定番の「かもめの玉子」は、シリーズ展開している。「りんごかもめの玉子」や「かもめのショコらん」、材料を吟味し金粉をあしらった「黄金かもめの玉子」など、たくさんのバリエーションがある。そのすべてが揃うのは、陸前高田ではアバッセ店のみとのこと。
■着の身着のまま
2011年3月11日、地震直後は、お客さんも従業員さんも共に高台を目指し、着の身着のまま避難したという。ショッピングセンターリプルにあった店舗を含め、沿岸の店舗は津波によりすべて流出。従業員さん同士の安否確認もなかなかできず、全壊したお店を前に立ち尽くしてしまった。
■お菓子と日常
陸前高田市竹駒の仮設で営業していた「さいとう製菓」 |
被災後いち早く立ち上がったさいとう製菓。その影には、「さいとう製菓が復興を引っ張って、みんなについてきてもらわなければ」という思いがあった。車も使えず移動もままならない中、内陸から自転車を取り寄せて出勤したり、工場が半稼働となり、少ない種類のお菓子を上手に組み合わせて用意したりして、仮設店舗として復活を遂げた。高田店仮設店舗がオープンしたのは2011年8月4日だった。
仮設店舗の店内 |
人を笑顔にし、いつも楽しい気持ちと共にあるお菓子は、日常の象徴と言えるのだろう。仮設店舗の開店と同時に、たくさんのお客さんがお菓子を買いにやって来た。お菓子屋さんでお菓子を買って、美味しいねと笑いあう。そういう「日常」が戻ってきた瞬間だったのではないだろうか。さいとう製菓の復活が、地域の人々にどれほど明るく見えたことか。
インタビューに答えてくださった従業員の中舘由里子さんは震災当時、これからどうなるのかと不安は抱えつつも、お仕事を辞めることは考えられなかったそうだ。お菓子を待っていてくれたお客さんの声を聞いて、「ここでよかった」と感じた、と笑顔で話してくださった。
■アバッセに出店して
2017年4月27日から、アバッセたかたに店舗を移したさいとう製菓。子ども達の元気な笑い声がたくさん聞こえるようになった。場所が変わっても、「集まれる場所」としての役割は変わらない。お店で知人友人と鉢合わせてお喋りをしていたりするお客さんの姿を見られるのが嬉しいという。「買い物だけでなく、人が集まり文化と歴史を継承していく、にぎやかな場所になることを願っている」と中舘さんは話してくださった。
岩手県民なら多くの人が、食べたことがある、お土産に持って行ったり、もらったりしたことがある、かもめの玉子。「ふるさとの味」として人々の記憶に残るさいとう製菓のお菓子が、会話の糸口にもなる。甘く広がる旅の味はもちろん、お客さんとさいとう製菓との変わらぬ絆こそ、さいとう製菓の愛される所以なのかもしれない。
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インタビューに答えてくださった 従業員の中舘由里子さん |