伊東文具店



伊東文具店


文具・本・CD

「まちと歩む本屋」

  インタビュー先:伊東文具店 齋藤一美さん

    

    電話番号:0192-53-2210    
    営業時間:9:00~19:00
    定休日 :なし(全館休館日のみ休み)
    ウェブ :http://www.yamajyu.info/smarts/index/1/




■陸前高田唯一の本屋 伊東文具店
山十・伊東文具店さんは、陸前高田唯一の本屋として、市民に愛されている。インタビューでお話を伺った店員の齋藤一美(さいとうひとみ)さんも、自身が高校生の時からずっと伊東文具店で書籍などを買っていたという。現在、アバッセに店舗を出している伊東文具店さんでは、書籍やCD、文具のほか、陸前高田にまつわるオリジナルのグッズなどを購入することができる。中でも、一本松のボールペンは一番の売れ筋だそうだ。

奇跡の一本松ボールペン

■段ボールの上に乗せた鉛筆と消しゴムから始まった
伊東文具店は、現在の社長のお母さんが段ボールの上に鉛筆と消しゴムを乗せ、販売したことから始まったという。そこから取引先を増やしていき、震災前まではショッピングセンターリプル内に「ブックランドいとう」と、駅前商店街に文具店を設けていたが、震災ですべて流されてしまった。齋藤さんも、被災当時そこで仕事をしていた一人である。揺れを感じ、そこにいたお客さんと従業員は駐車場に集まったあと、みんなで避難を開始した。齋藤さんは高齢者のお客様と一緒に逃げていたが、「お年寄りがいては大変でしょうから」と、親切な方にそのお客様を車に乗せてもらったこともあり、早めに避難場所に指定されていたシルバー人材センターへ逃げることが出来た。しかしそこで放送が途切れ、下を見ると津波が押し寄せていることに気づく。ここにいてはまだ危険だと気付き、さらに上へ、道なき道を逃げた。次の避難先では、ブルーシートにくるまり、寒さをしのいで夜を明かした。翌日、明るくなってから町の方をみると、かつての陸前高田のまちは何もなくなってしまっていた。

竹駒時代の仮設店舗
■わずかひと月で営業再開
震災からわずかひと月と少し、2011年4月15日に仮設店舗にて営業を再開した。学校も再開される中で、子供たちがノートやペンを買う場所が必要だったので、多くの人の支援を得ながら営業を始めた。この年の1215日には竹駒駅近くの仮設へ店舗を移し、本の取り扱いも再開する。さらに201210月には竹駒町相川へ移転。この頃はより敷地も広がり、CDの取り扱いも始める。
竹駒町相川の仮設店舗

3度の移転の中での変化は、本のニーズだった。「最初は(支援に来てくれた方や、支援してくださった方へのお礼の品として)震災関連の本が売れていたが、次いで(仮設住宅のため)収納術に関する本や、趣味を扱った雑誌が売れるようになってきた。生活が出来るようになってきたからだと思う。」と、最初の仮設店舗からお手伝いをし、二店目から従業員として戻って来た齋藤さんは語った。


■アバッセに出店して
アバッセに出店してからは、客層にも変化が出てきている。以前の仮設までは年配の利用者が多かったが、最近では高校生が増えてきているという。そのほかにも、震災以前まで利用していたお客さんが戻ってきたり、同じく出店している店の方との交流や、図書館とのコラボイベントの企画を行うなど、新たなコミュニティが、アバッセを中心に出来始めているようだ。

震災・郷土に関わるコーナーが設けられている
■まちの本屋さん

陸前高田出身である齋藤さんは、学生時代から伊東文具店さんにお世話になってきた。そして自身が働くようになってからは、同じように高田の子を見続けてきている。大人になってから「伊東文具店の店員さんですよね」と話しかけられることがあったり、伊東文具店さんにアルバイトに来ている子のお姉さんが、齋藤さんが接客をしていたお客さんと発覚することもあった。伊東文具店は高田の人を見守り続け、一緒に時間を過ごしてきているまちの本屋さんなのである。

そんな伊東文具店は、高田の新しいまちの中心となる、アバッセに入店している。このようなまちの変化を、伊東文具店と同じく高田のまちから見つめる齋藤さんは「とにかく見に来てほしい」と語った。「皆さんのおかげでここまでこれた。頑張っているという姿を見に来て欲しいし、皆さんに恩返しをしたい。」高田に以前以上の活気が戻ってくる日は、もうすぐかもしれない。




インタビュアー:
岩手大学修士一年(A.M
インタビュー実施日:2017/11/25
宮城県仙台市出身です。大学入学を機に盛岡にきました。陸前高田には、今回で三回目でした。大学入学直後に来た時は、(語弊を恐れずに言うと、)まだ何もなかった高田の町が、去年、そして今年とどんどん変わってきていて、それこそ奇跡の一本松のように、まちと皆さんから強い活力を感じています。この変化を、もっと多くの人に見て欲しいです!